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 10数年前、熊本県水俣市を訪れたときのことです。杉本栄子さんという方が、水俣病の語り部をつとめていらっしゃいました。たくさんの人が研究のためにやってきた。水俣病の研究で偉い教授になった人は大勢いたけれど、水俣病患者の状況は長い間よくならなかった。だから、私たち自身が語らないといけないと思った。杉本さんはそうおっしゃっていました。
 その言葉は、私の胸に突き刺さりました。私も地域を研究して生きてきたが、論文や本を書くことばかりに気をとられ、お世話になった人のために何もできていないのではないか。そこで自分を省みることができ、フィールドで出会う人のため、地域のために自分に何ができるのかを真剣に考えるようになりました。
 それからは、フィールドで出会う人たちとともに、地域の未来をよりよいものにするための実践的な活動にかかわってきました。大阪大学グローバルコラボレーションセンター(GLOCOL)、グローバルイニシアティブ・センター(GIセンター)の一員として、研究・教育・実践の一体化を目指す活動に携われたことは、そのための大きな助けになりました。
 フィールドスタディ・プログラムを通じて、のべ120名以上の学生と、モンゴル、雲南、そして日本の近畿地方のさまざまな地域との縁をつなげることもできました。地域の人たちと深くかかわるための準備を整えてあげれば、学生たちは次々とアイデアを生み出し、とてつもない実行力を発揮します。若者ならではのひらめきを生かして、子どもたちのための環境教育プログラムをつくったり、工場や農場で処理に困っていた廃棄物を立派な商品に変えてしまったり、本当に見事なものです。そうした活動は、現地の人から喜ばれるだけでなく、大阪大学の学長賞をいただき、スタンフォード大学のsocial innovation誌から実施報告の執筆依頼を受けるなど、国内外の研究教育機関からも評価されるに至っています。
 しかし、大学をとりまく状況は昨今ますます厳しいものになりつつあり、研究や教育の意義が認められたとしても、十分な資金と活動の自由が得られないという課題に直面しています。研究・教育・実践をつなぐことでようやく新たな価値を生み出す方法が具体的になってきたところで制度上の限界も見えてきました。そこで、考えに考えを重ねた結果たどり着いたのが、この法人の設立でした。これまでスタディ・プログラムに参加して巣立っていった元学生たちが親睦を深めるためにつくったモンゴル雲南会という任意団体を母体として法人化することで活動を広げていこうという試みです。
 兵庫県宍粟市の緑の映える山の麓に活動拠点を構え、私たち一般社団法人北の風・南の雲は2020年5月18日に新たな門出を迎えることができました。私たちは、モンゴル、雲南、日本の各地で結んできた縁をこれからも大切にし、地域に学び、地域とともに実践する活動を続けていきます。知識と経験を、気づきと学びを、そして驚きと感動を皆さんと共有し、一緒にアジアの未来を考えていきたいです。

上須 道徳

Michinori UWASU

地域には大切なもの素敵なものがたくさんあります。それらを次の世代にどうつなげる、どう伝えていくのか、みんなと活動しながら考えていきたいと思います。

阿部 朋恒

Tomohisa ABE

モンゴルの草原に吹く風に憧れ、雲南の雲の上に暮らす人たちが大好きです。

須和 憲和

Norikazu SUWA

私は、この法人の拠点、宍粟市の南にあるたつの市在住です。
2012年モンゴルフィールドスタディに参加しました。

大谷 紗也加

Sayaka OHTANI

思沁夫代表の元学生です。
モンゴルや中国、日本でのフィールドスタディ参加や引率の経験を宍粟市でも活かしたいと思います。

いま活躍中の仲間たち

置塩ひかる

Hikaru OKISHIO

丹波篠山で農業に関わりながら、「大切なものを大切にする」「やりたいことをやる」生き方を模索中です!

千賀 遥(大阪大学卒業生)

Haruka SENGA

新社会人です!
しばらく大阪に勤務する予定なので、たくさん宍粟市に行って活動したいです!

吉田 泰隆

Yasutaka YOSHIDA

生粋の大阪人です。
宍粟を訪ねて思先生のもとで学び、最近は合理主義からの脱却を目指しています!

中野 裕介(大阪大学卒業生)

Yusuke NAKANO

皆様方に厄介をかけながら地域活性化に取り組む駆け出し者です。面体お見知りおきの上よろしくお願いいたします!

岸本 康希

Koki KISHIMOTO

現在(2020年)、大学院生です!
趣味はギター、音楽制作、散歩です。
宍粟市に貢献できるよう精進します!

水森 百合子(大阪大学卒業生)

Yuriko MIZUMORI

物理科卒の社会人1年目。
昨年はスチンフ先生の、個の経験から世界まで繋がるユニークなお話に感化され、アフリカまで行ってしまいました。

宮ノ腰 陽菜(大阪大学卒業生)

Haruna MIYANOKOSHI

田舎出身で、現在東京で働く新社会人です。
やりたいことと地元への愛との狭間で道を模索しているので、宍粟市を通して地域について学ばせていただきたいと思います。